2013年2月12日火曜日

サラ・ファネリの手描きのタイポグラフィー



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■1969年にイタリアのフィレンツェに生まれる。リチェロ・クラシコ・ミケランジェロで学位を取得したのち、英国のシティー・アンド
ギルズ・オブ・ロンドンアートスクール、キャンバーウェル・スクール・オブ・アート、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学ぶ。

■絵本:Sometimes I think, Sometimes I am, Pinocchio, Mythologica Monsters of Ancient Greece, First Flight, Dear Diary, It's 

Dreamtime, A Dog's Life, Wolf!, My Map Book, Buttonなど

■クライアント:ザ・ニューヨーカー、ペンギンブックス、テイトモダン、テイトブリテン、ザ・ビクトリア・アンド・アルバート

ミュージアム、BBC ワールドワイド、ニューヨークタイムズ、ロイヤル・メール、ロン・アラッド、イッセイ・ミヤケなど

■アワード:ザ・ビクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム(2回受賞)、 D&AD シルバーアワード(2回受賞):ポスター/
2003、郵便切手/2003など2006年に女性として初めてHONORARY RDI (ロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー)に選
ばれる。
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サラは2006年に英国の近代現代美術館テイト・モダンから永久保存版の壁40mの手描きのタイポグラフィーを依頼された。
この壁には20世紀の著名なアーティストの名前が時系列で描かれている。
初めて見た時、この大きな手描きのタイポグラフィーの壁には圧倒させられた。
壁にはブロック体や筆記体など様々な様式で一色描かれいる。
統一性がありシンプルで奇麗だ。
彼女の絵本の中で描かれているイラストのタイポグラフィーは筆の筆跡があるので、今回の壁に描かれたタイポグラフィーもおそらく筆で描かれたものだと思う。
名前の一つ一つが少し右肩上がりになっていて手描き感でている。





テイト・モダンの壁



今までテイト・モダンでここまで思い切ったイラストの文字を展開するのは初めて見るので、現代アートの展示を行っているTateでイラストレータを起用するのには少し驚きがあった。
グラフィックデザイナーやアーティストであれば恐らくこの違和感は抱かなかったと思う。
サラの絵本作家としての実績と才能はイギリスでかなり影響力があると感じた。 

手描きのタイポグラフィーは彼女の絵本でもよく使われていて、イラストと非常にマッチしている。
自然体かつしっかりとしたイラストの文字は彼女のワークをより引き立てている。
絵本分野では文字と絵との調和、バランスが非常に重要なテーマになってくる。
彼女自身は絵本作家、イラストレーターだが、タイポグラフィーの重要さをよく理解している人だと思う。


サラの代表作の絵本:ピノキオ



サラの生まれはタイポグラフィの歴史と切っても切り離せない場所、イタリアのフィレンツェだ。
ローマにはトラヤヌス帝の戦勝記念碑(112年-113年)があり、後世の大文字の模範となっている。
フィレンツェを中心に起こったルネッサンスがローマン体やイタリック体が生まれたきっかけになっている。


トラヤヌス帝の碑文


スヴァインハイムとパナルツによるプレローマン体


ニッコロ・ニッコリの筆記書体



両親もアートに精通していて、父親が建築史学者で母親がアメリカの美術史家だ。
彼女がタイポグラフィーに注目したのはごく自然のことのように見える。

彼女の作る物はどこか手作り感を感じさせて親しみを覚えさせる。
デジタル技術を駆使しているわけではないのに色使いやテクスチャの使い方、構成力、手書きのタイポグラフィの絶妙な組み合わせで現代的な新しさ、新しい時代性を感じさせる。





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